2011年09月30日

コルドバ Córdoba

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前回に続けて、CD「クラベリートス」に収録した作品を少しづつ、ここにご紹介していきます。

次の4曲は、過去の記事にあります。
1.「グラナダ
6.「オリエンタル
7.「詩的ワルツ集
9.「アラビア風奇想曲


今回紹介するアルベニスの「コルドバ」は、グラナドスの「オリエンタル」と共に、
コルドバの過ぎし日の情景を歌い上げた曲です。コルドバ讃歌のあらゆる曲の中で、
この「コルドバ」が最高傑作に違いないと私は思います。


さて、この曲の冒頭には、次のような一文が掲げられ、曲も詩的な内容に満ちています。


 <ジャスミンの香りをのせたそよ風が漂う夜の静寂を、

 天高く揺れ動く椰子の木のため息にも似た、情熱的で

 甘い音色の一弦琴グスラの響きがさえぎる。>


作曲家自身が「夜想曲」と、サブタイトルにつけたように、
曲は夜の静けさを歌い上げています。
はじまりの低音で荘厳に響く和音は、この街のシンボルである
古きメスキータの鐘の音です。そして、続く宗教的なフーガは、
古都コルドバの静かな印象そのものです。中間部になると、
軽快なシンコペーションにのせ、パソドブレの美しいメロディーが
哀愁を帯びて歌います。

1897年の夏、この街を訪れたアルベニスは、この街の佇まいに感動し、
かつてのイスラムの黄金時代に想いを馳せてこの曲を書いたのですが、
こんなにも鮮明に、コルドバの魅了を伝えるアルベニスの才能に驚ろ
かされます。そして、私もこの曲を演奏するときは、いつもはるか千年
の昔、コルドバの世界へと舞い戻り、今と変わらぬ当時の人々の生活、
そしてこの世に繰り返される生と死を想い、メスキータの鐘の音を聴き、
石畳を歩くのです。そして、曲のクライマックスの部分からは、まるで
砂塵が巻き上がったかのように、街から人々のざわめきが一瞬にして
消え、その幻影を追いながら現実へと引き戻されます。

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◇ コルドバ(夜想曲)Córdoba (Nocturne) Op. 232-4  Issac Albeniz 作曲◇


楽譜情報*ピアノソロ

    スペインの歌 作品232の曲集として、U.M.E、Shott、 IMC版他、国内の
    全音楽譜出版社、音楽の友社、ヤマハミュージックメディア社などからも
    発売されています。この曲集の第4曲目が<コルドバ>です。 

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
    
CDs 
   ・アリシア・デ・ラローチャ「イベリア」
   (2枚組アルバム/組曲イベリア&スペイン組曲収録)

   ・NewCD_Clavelitos_Jake_YokoTakaki_S.jpg
   「グラナダ」に続き、この「コルドバ」をCD「クラベリートス」の
    第2曲めに収録しています。

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー             
* ギターとピアノ(編曲)
  ・・・ ギターとピアノのデュオ作品:グラナダ、コルドバ、セビーリャ
      楽譜:アルベニス選集 井上勝仁編曲(全音楽譜出版社)   
   
CD:「KAMAKURA/鎌倉」高木洋子(P )&手塚健旨(G)
   「Aromas de Andalucia」クエンカ兄弟(P&G)

DVD:「レイエンダ」マリア・エステル・グスマン(G)&高木洋子(P)

 ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
* ギターソロ(編曲)  
CD:「Cantos de España」マリア・エステル・グスマン(G)




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2011年06月05日

オリエンタル Oriental

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CD「クラベリートス」に収録した作品を少しづつ、ここにご紹介していきたいと思います。

次の3曲は、過去の記事にあります。
1.「グラナダ
7.「詩的ワルツ集
9.「アラビア風奇想曲


今回は、エンリケ・グラナドスの「オリエンタル」について書きます。
この作品は初期の傑作と言われる『12のスペイン舞曲集』の第2番目におかれ、
第5番目の「アンダルーサ」と共に、よく知られる名曲です。

曲のタイトル「オリエンタル(東洋)」は、その昔イベリア半島で栄華を
誇ったイスラム文化を差し、その中心となった千年の都、コルドバの街
の栄華衰退を思い起こさせます。

特徴的なのは、前半、後半部ともにハ短調で統一された作曲法です。
たえまなく繰り返される伴奏の
「ドレ♭ミソミレ ドレドレミソ」
そこに、右手で歌われる3度のメロディ
「ソ♭ミソ〜ファミ ファ ファミレ〜」
これらが絶妙に重なります。
中間部のゆったりとした部分は、深い哀しみと祈りに溢れています。

このように素晴らしい作品を残してくれた、グラナドス
という人はどういう人生を送ったのか。。
私の著書「スペインの風景」に詳しくありますので、
興味のある方は是非ご覧下さい。

・ゴヤの絵に魅せられたエンリケ・グラナドス〜P.144-145
・不思議な糸で結ばれているアルベニスとグラナドス〜P.152-153

など、きっと、さらに奥深い、グラナドスやアルベニスの世界、
さらにはスペイン音楽の魅力に触れて頂くことができると思います。




 ◇ オリエンタル 〜 スペイン舞曲 第2番 ◇
    Enrique Granados 作曲 
    Oriental ( 12 danzas españolas no.2) 

 
楽譜情報*ピアノソロ 

  『12のスペイン舞曲』曲集

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U.M.E(ウニオン・ムシカル版)
Boileau(ボアレウ版)ラローチャ監修のグラナドス全集より第1巻
Hal Leonard(アル・レオナルド版)
Dover(ドーヴァー版)ー組曲『ゴイエスカス』との『スペイン舞曲集』を収録
音楽の友社
ヤマハ・ミュージック・メディア社
春秋社
全音ピアノライブラリー 解説付き(¥1.680)

 以上、外版もたくさんでていますが、まず始めに国内で購入するなら安価で解説付の全音がお薦めです。

ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー・ー
    
CDs

NewCD_Clavelitos_Jake_YokoTakaki_S.jpg

NEW CD 「クラベリートス」の6曲目に収録しています。
   
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コンドン・コレクション4~作曲家編 
エンリケ・グラナドス/マヌエル・デ・ファリャ 


   *グラナドス自身が演奏した録音(ピアノ・ロール式録音)に、この「オリエンタル」も素晴らしい演奏で残されています。
    当時の香り高いグラナドスの演奏、そしてファリャの歴史的演奏が聴ける貴重な1枚です。

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グラナドス:スペイン舞曲集
    *アリシア.デ.ラローチャ演奏のCDアルバムに収録されています。


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2011年03月07日

CD「クラベリートス」発売のお知らせ

高木洋子 New アルバム「クラベリートス」

このブログでご紹介している作品も収録した
新しいソロアルバムを3月28日に発売しました。

タイトルの「クラベリートス」は8番目の曲目からつけました。
「Clavelitos」はスペイン語でカーネーションの複数形。
心をこめて収録したこのアルバムを多くの皆様に楽しんで
頂けることを心より願います。

CDCDの内容、詳細はこちら
http://www.yokoalbum.bona.jp/album/pg109.html



CLAVELITOS / クラベリートス 

1.グラナダ(I.アルベニス)
2.コルドバ(I.アルベニス)
3.セビーリャ(I.アルベニス)
4.朱色の塔(I.アルベニス)
5.ロンデーニャ(R.S.デ.ラ.マーサ)
6.オリエンタル(E.グラナドス)
7.詩的ワルツ集(E.グラナドス)
8.クラベリートス (J.Q.バルベルデ)
9.アラビア風奇想曲(F.ターレガ)
 大聖堂 (A.バリオス)
10.-1.プレリュード
11.-2.宗教的アンダンテ
12.-3.荘厳なアレグロ
13.フーリア・フロリダ(A.バリオス)

(ピアノアレンジ)
 -9.〜M.ブルゲス
-5,8,10-13〜高木洋子


ー「Tesolo del Piano」ブログでご紹介した作品
1.グラナダ
7.詩的ワルツ集
9.アラビア風奇想曲


posted by YOKO at 02:53| Comment(0) | TrackBack(0) | お知らせ

2010年04月15日

詩的なワルツ集  Valses Poeticos

久々にピアノのための素敵な1曲をご紹介します。


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今年の私のコンサートでメインプログラムとして取り上げている
グラナドスの「詩的なワルツ集」です。
エンリケ・グラナドス(1867-1916)は、アルベニス、
ファリャ、トゥリーナとともに、スペイン国民楽派を代表する
人物として知られています。23歳の時、バルセロナでのデビュー
・コンサートを皮切りに、ピアニストとしても華々しい活躍を
し、作曲家としても確固たる地位を築きました。

「詩的なワルツ集」は、初期の頃の傑作で、夢見るロマンティ
ストであったグラナドスがこよなく愛した、ショパンやシュ
ーマンなどの作品の影響を受けています。

曲はリズミックな序奏に続き、短いワルツ風の変奏が繰り広げ
られますが、それぞれに「情熱的なワルツ」、「ユーモラスなワルツ」、
「華麗なワルツ」、「センティメンタルなワルツ」etc..と性格の
異なるワルツが7つ。どれもが詩的な表情溢れる美しい作品ばかり
です。

ギター編曲でも演奏されるため、ギター愛好家にはこの曲の
ファンが根強いようです。確かに、この詩的な色合いをもつ
グラナドスの作品は、美しい音色で歌うことが出来るギター
にぴったりですが、早いテンポの部分はギターでは演奏が
難しいため、省かれることが多くなります。

オリジナルのピアノでは、「軽やかさ」「優美さ」「なめら
かさ」そして、「華やかさ」を歌い上げることができるので、
私はこの曲の魅力を最大限に引き出して演奏したいと
思っています。


  Granados.jpg
 

 
◇ 詩的なワルツ集  Enrique Granados 作曲 ◇
  Valses Poeticos (1887)
  友人の名ピアニスト、ホアキン・マラッツに献呈
 
楽譜情報ピアノソロ 

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      U.M.E ー 詩的なワルツ集(1910年初版)
      Boileau ー ラローチャ監修のグラナドス全集より16巻
      I.M.C − 詩的なワルツ集
      Masters Music − 詩的なワルツ集 
      Salabert ーザ・ベスト・オブ・グラナドス19小品集
                     /詩的なワルツ集
    granados02.jpg
      全音ピアノライブラリー(¥1.260)

以上、外版もたくさんでていますが、国内で購入するなら楽譜校訂、解説付の全音がお薦めです。

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CDs:
   
 granados03.jpg  
コンドン・コレクション4~作曲家編 
エンリケ・グラナドス/マヌエル・デ・ファリャ
 

   グラナドス自身が演奏した録音(ピアノ・ロール式録音)に、この「詩的ワルツ集」も素晴らしい演奏で残されています。当時の香り高いグラナドスの演奏、そしてファリャの歴史的演奏が聴ける貴重な1枚です。

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グラナドス:スペイン舞曲集
    アリシア.デ.ラローチャ演奏のCDアルバムに収録されています。


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2009年09月27日

アラビア風奇想曲 Serenata Arabe

Tarrega-Guitarra.jpg

すっかり休眠状態になっていた、この「Tesoro del Piano」ブログコーナー
ですが、久々におすすめの1曲をご紹介します。

今年2009年はイサーク・アルベニスとフランシスコ・ターレガの没後百年に
あたります。アルベニスはピアノ、ターレガはギター界のプリンスであり、
スペイン音楽を語る上でいなくてはならない二人です。友人同士でもあった
二人は偶然にも1909年の同じ年に亡くなったのですが、この百年という区切り
の歳月を記念して、各地でコンサートやイベントが行なわれています。

アルベニスについては、一番はじめに「グラナダ」について記事にしました
が、もちろん、それ以外の作品も組曲『イベリア』を初め、素晴らしい曲が
目白押しです。今回は、<ギターの父>と讃えられるターレガの作品から、
最近、私がレパートリーとしているのが「アラビア風奇想曲」です。

この作品はギタリストの間ではポピュラーな曲ですが、実際、ピアノの世界
では、この作品をご存知の方は少ないかも知れません。
有名なターレガの「アランブラの想い出」と聴けばトレモロの美しいメロディ
が浮かびますが、この「アラビア風奇想曲」も、とても印象的な作品です。

ギターの世界では、ピアノの作品を編曲した作品が多く、特にアルベニスの作品
は、オリジナルがピアノ曲であるにもかかわらず、ギター曲として多く弾かれて、
ピアノ以上に効果的に聴かせることのできる<アストゥリアス>のような作品さえ
あります。ところが、ギターの作品をピアノ用に素敵な編曲をしたものとなると、
そう多くはありません。

その中でもターレガの「アラビア風奇想曲 CAPRICHO ARABE」を、ピアノ用に
素晴らしく編曲したのが、ターレガの友人ピアニストであり、作曲家であった、
ブルゲスでした。当時、人気のあったこの作品はヴァイオリンやオーケストラなど
様々な楽器に編曲されたのですが、楽譜として残ったのは、マドリッドのIldefonso
Alier出版社からのピアノソロ版のみでした。
その楽譜のタイトルは「アラビア風セレナータ SERENATA ARABE」となって
いますが、オリジナルの曲の魅力をそのままに、ピアニスティックな面も合わせ
持った、このブルゲス編で、新たな魅力を楽しむことができるのです。

*北スペインのコンサートでの演奏をこちらのページでお聴き頂けます。
 
◇ Serenata Arabe para piano  
    Francisco Tárrega 作曲 / Manuel Burgués (1874-1945) 編曲 ◇ 
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CD情報 * NEW CD 「クラベリートス」の9曲目に収録しました!

楽譜情報 *  長らく絶版となっていましたが、UME社からアーカイブものと
   して復刻されたようです。  
   ショップ情報:ホマドリーム
    
お薦めサイト *  francesctarrega.com(西・英・バレンシア語)
Francisco Tarrega オフィシャルホームページー没後百年を記念しての
サイトです。ラグリマやアデリータなどの楽譜(ギターソロ)のダウン
ロードや、貴重な写真類を見ることが出来ます。
   
お薦め書籍 * Tarrega の生涯 現代ギター社(アドリアン・リウス、手塚 健旨著)
TarregaLibro.jpg
  フランシスコ・タレガ―GG370

  
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2008年02月24日

パストラール Pastral

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以前取り上げた「朱色の塔の影にて」と「アランフェス協奏曲」でお馴じみの
作曲家、J.ロゴリーゴの作品が1926年にスケッチした彼の初期の作品です。

全篇を通して、野原に聞こえるカッコウの鳴き声をモチーフにした曲ですが、
作風はエレガントで宮廷舞曲を想い起こさせます。
そして後半に現れるアルペジオの部分はまるでオルゴールを聞くかのよう。
小品ですが、のどかな田園風景が描かれて、そこからパストラール(牧歌風)
のタイトルが付けられたのです。

オリジナルはピアノ曲ですが、ギターや他の楽器でも弾かれています。


◇  パストラール Pastoral  J.Rodrigo 作曲 ◇ 

楽譜:3Pの短い曲なので、パストラール単体では出版されていません。
   下記の輸入楽譜でお探し下さい。 

   * ピアノソロ(オリジナル)
    <Cancion y danza/ Pastoral / Preludio de anoranza >
    Rodrigo Ediciones
    Rodrigopastral.jpg
   * ギターソロ (Anegel Romeo 編)
    <Zarabanda lejana / Pastoral / Fandango del ventorrillo>
    Rodrigo Ediciones  

CD:ロドリーゴ自作自演の貴重な演奏で、この作品が収録されています。
    ・「Interpreta a Rodrigo : obras para piano / Joaquin Rodrigo」
                           (EMI Classics)
    ・「ロドリーゴ自作自演集」(東芝EMI)
    ・「KAMAKURA/鎌倉」AM505:パストラール収録(ピアノソロ)
posted by YOKO at 14:53| Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ

2007年06月12日

ロシオ祭の行列 La Procecion del Rocio Op.9

M.de.ファリャと並んで20世紀はじめのスペイン音楽界を代表する
ホアキン・トゥリーナ(1882-1949)も、数多くの魅力的なピアノ
作品を残しています。近代的な和声と民族音楽の特色を色彩的に結び
つけたことから、「音の風景画家」と称えられるトゥリーナの、色彩
溢れる音楽の魅力に溢れています。
「闘牛士の祈り」「5つのジプシー舞曲」「サパテアード」etc 。。など、
他にも私の好きな作品はありますが、ここでは「ロシオ祭の行列」を取り
上げます。実は昨春のこと、マドリッドの楽譜屋さんを訪ね歩いていて偶然
この楽譜を見つけたのですが、日本に帰ってこの曲と取り組んでみると、
なんとこれが、私好みの実に素晴らしい作品だったのです。



復活祭の七週間後の日曜の聖霊降臨祭(5月終わり、または6月はじめ)
セビーリャと県下の人々はトリアーナ地区に集まります。
これは聖女ロシオの像が、これから60Km先の本山に巡礼に旅立つのを
見送るためです。そして大勢の人々もそれに付き添って幌馬車で巡礼する
1週間が「ロシオの巡礼祭り」なのです。
(スペイン語サイト http://www.rocio.com/
 
1913年、パリでこの曲を聴いたドビュッシーが、”美しい絵画を観るかの
ような作品“と讃えたように、伝統的なセビーリャの祭りを、華やかな色彩感
をもって絵画的に描写した曲が、この「ロシオ祭の行列」です。

曲は「祭りのトゥリアーナ」と「プロセッション(行列)」の2つの部分
からなりますが、その基盤にあるのが、陽気なリズムのガロティンと行進曲。
1曲目の「祭りのトゥリアーナ Triana en Feista」は、セギディーリャスの
リズムでセビーリャの喧噪が表現され、続いてソレアレスのリズムによる
「コプラ」と呼ばれる厳かな宗教歌が聴かれます。
2曲目の「プロセッション La procesion(行列)」は絵画的にメロディを彩り、
宗教行列の情景を行進曲でいきいきと描いています。スペイン国家や鐘の音も
交じり、先の祭りの歌と踊りを回想し、最後に祭りは静かに幕を閉じて終わります。

トゥリーナはこの作品を、はじめにオーケストラ曲で書いたのち、彼自身が
ピアノ用に編曲したしました。ピアノ版はテクニック上難しい部分もあり、
中・上級者向けですが、9分を越えるこの作品は弾きごたえも、聴きごたえも
充分の曲です。
 
 
 ◇ ロシオ祭の行列  Joaquin Turina 作曲 ◇
   La Procecion del Rocio Op.9 (1913)


 楽譜:ピアノソロ版(作曲者編)
    Paris : Edicion SALABERT 社
    ピース、トゥリーナ曲集があります。
    (ソロの他に連弾(トゥリーナ編)、2台ピアノ(Lerolle編)もあります。)
    
 録音:ピアノソロ編
    トゥリーナの全曲録音を進行中のアントニオ・ソレア氏のCD、
           Vol.6 Sevilla 編に収録されています。
    (シリーズ名 Obra completa para piano Complete piano works /
            Joaquin Turina Edicions A. Moraleda )
    オーケストラでは
    ・Naxos より、トゥリーナ作品集「Sinfonia Sevillana」のタイトルで収録。


 コンサート:2007年6月15日(金)かなっくホール
    石井三榮子(メゾソプラノ)&高木洋子(ピアノ)ジョイントコンサート
     スペイン音楽・魅惑の世界 
     〜歌とピアノで巡る、バスク地方から情熱のアンダルシアまで〜  
       
     この『ロシオ祭の行列』他、たくさんのスペイン音楽をお聴き頂けます。
     詳細は、ホームページ
     コンサート情報をご覧下さい。皆様のご来場、心よりお待ちしております。
posted by YOKO at 21:50| Comment(2) | TrackBack(0) | ピアノ

朱色の塔の陰にて A l'ombre de Torre Bermeja para piano

 
 前回の『アランフェス協奏曲』の作曲家、J.ロドリーゴのピアノ作品
 の中から、『朱色の塔の陰にて』をご紹介します。

 この作品は、私がスペイン音楽をはじめた当初に演奏していた愛奏曲
 です。久しぶりに最近のコンサート・プログラムにも組み入れて
 演奏していますが、何度弾いても味わい深い作品です。
 ロゴリーゴが曲に込めた深い想いは、そこにとどまらず、聴く人の
 心の奥底につながる想いと重なって響くように感じられます。
 私自身この曲を演奏していると、感動で涙が出るような祈りの気持ち
 が湧いてきて、それが曲の流れに同化して強く胸を揺さぶらされます。
 作曲家の想いが音となり、メッセージとなる、
 『朱色の塔の陰にて』はそのような作品に思えるのです。

granadanoche.jpg


 〜作品が創られた経緯〜
 
 1943年4月、当時の名ピアニストでスペイン物の演奏では当代随一と
 謳われたリカルド・ビーニェスが亡くなりました。その時、ビーニェスを
 讃える曲を、彼と親交の深かった3人の作曲家が提案し、1947年、“リカ
 ルド・ビーニェスの想い出に”とのタイトルのもと、曲集がマドリッドで
 出版されたのです。
 1曲目に、エルネスト・ハルフテルによる「涙」。
 2曲目が、フェデリコ・モンポウの「想い出」。
 そして、最後の3曲目に書かれているのが、ホアキン・ロドリーゴの「朱色の
 塔の陰にて」でした。
 
 言うまでもありませんが、朱色の塔は、他ならぬあのイサーク・アルベニスの
 名曲。リカルド・ビーニェスがこの曲を愛してやまず、またその名演奏に接し
 ていたことから、ロドリーゴは追悼曲として、朱色の塔のテーマを用いること
 をためらいませんでした。曲はアルベニスに似せて3連符からなるテーマを用
 い、スペイン風に、しかしビーニェスが住んだフランスの情緒も盛りこんで作
 られています。
 まず、序奏から始まり、第1主題、第2主題、再び第1主題、序奏、コーダとい
 う構成ですが、これもアルベニスに良く見られるスタイル。
 ロドリーゴは敬愛する大先輩のアルベニスと親友ビーニェスを見事に引き立て 
 て、実に味わい深い作品を残してくれました。

 
 ◇ 朱色の塔の陰にて Joaquin Rodrigo 作曲 ◇
 
 *ピアノソロ(オリジナル)
 楽譜:原題「A l'ombre de Torre Bermeja para piano」
      ・Schott版  ED 7454 (ピース)
      ・Schott版 Spanish nights : for piano 3曲の中に含まれています。      

  CD:ロドリーゴ自作自演の貴重な演奏で、この作品が収録されています。
    ・「Interpreta a Rodrigo : obras para piano / Joaquin Rodrigo」
                           (EMI Classics)
    ・「ロドリーゴ自作自演集」(東芝EMI)
    ・ 私のファーストアルバム「スペイン音楽紀行」にも
      ライブ演奏を収録しています。
 
 コンサート:2007年6月15日(金)かなっくホール 
   石井三榮子(メゾソプラノ)&高木洋子(ピアノ)ジョイントコンサート
   スペイン音楽・魅惑の世界 
   〜歌とピアノで巡る、バスク地方から情熱のアンダルシアまで〜  
       
  この『朱色の塔の陰にて』他、たくさんのスペイン音楽をお聴き頂けます。
  詳細は、ホームページのコンサート情報を
  ご覧下さい。皆様のご来場、心よりお待ちしております。
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2007年03月23日

アランフェス協奏曲: 楽譜・CD情報 (追記)

   
Aranjuez05.jpg


楽譜:オーケストラ版(ミニスコア)/ユーレンブルク版 ETP1809        
   ギターとピアノ/SCHOTT 版 ED-7242


おすすめCD:様々なアーティストが『アランフェス協奏曲』を録音していますが
       私のお薦めをご紹介します。

 ◎ギター+オーケストラ:
   ♪ まず、ギター&オーケストラで聴きたい場合は、ロドリーゴ自身
     折り紙付きのナルシソ・イエペスの演奏で、『ある貴紳のための幻想曲』
     とカップリングされているものがお薦めです。

 ・CD B000I0S8I ユニバーサルクラシック
     ナルシソ・イエペス(G)+フィルハーモニー管弦楽団 他 
 ・CD B0007OE2FI ユニバーサルクラシック 
    ロドリーゴ作品集 2枚組 (上の2曲以外に、他のロゴリーゴ作品も収録。)
    

    ♪ また、この作品を献呈され、1940年11月9日にバルセロナのカタルーニャ
      音楽堂で、バルセロナ・フィルハーモニー管弦楽団をバックに初演した
      レヒーノ・サインス・デ・ラ・マーサの演奏も聴き逃せません。
      レヒーノは「アランフェス協奏曲」を下記2回、録音していますが、始めの
      録音の方がテクニックも冴え、名演。
      SP版の復刻で、録音状態は悪いものの、当時の息づかいが感じら
      れる、味わい深い演奏です。
        
 ・R.サインス・デ・ラ・マーサ(G)独奏
   1:スペイン国立管弦楽団+アタウルフォ・アルヘンタ指揮
        ↓              (コロムビア/1954)
   ・CD:『セゴヴィアとその同時代人たち第9集』
     Andres Segovia and his Contemporaries, Vol. 9   〜セゴヴィア&サインス・デ・ラ・マーサ (輸入版)
     
   2:マヌエル・デ・ファリャ管弦楽団+クリストバル・ハルフテル指揮
           ↓     (RCAビクター/1962/レヒーノ2番目の録音音源 収録)
    CD:ロドリーゴ集 アランフェス協奏曲/ある貴紳のための幻想曲
      

 ◎ギター+ピアノ:この組み合わせでも、是非一度お聴きください。
 
  ・CD「KAMAKURA/鎌倉」AM505:第2楽章収録(手塚健旨&高木洋子)
  ・CD「マリア・エステル・グスマン ギターリサイタル」PLCD-037
     コンサートライブ(2000年)録音版:第2楽章収録(P/高木洋子) 

 ◎ビデオ:「アランフェス協奏曲 マリア・エステル・グスマン +高木洋子(P)」
      CGV1038(1999年)ギターとピアノで、全楽章を収録しています。

       
  ☆ ピアノソロでも弾いてみたいという方には、第2楽章をロドリーゴ自身が
    ピアノ用に編曲した楽譜があります。
    ただ、この編曲では、後半の感動的な部分(ギター+ピアノ版の最後、
    ピアノソロで盛り上がる箇所)がカットされて、静かに終わります。
    個人的には、オーケストラ版の楽譜を参照して、クライマックスの
    部分は組み合わせて演奏した方がいいように思われます。

 楽譜:ピアノソロ (同じくギターソロでも出版されています。)
    〜 Aranjuez , Ma Pensee 〜 
      Tema del adagio del Concierto de Aranjuez
    Para Piano 〜 Version del Autor
     (190115 Editiones Joaquin Rodrigo)


 おまけ♪ さすがは、世界の『アランフェス協奏曲』!
    のだめカンタービレでも使用されていましたね。
    ご覧になられた方は、お気づきになられたでしょうか。
posted by YOKO at 15:34| Comment(0) | TrackBack(0) | ピアノ&ギター

『アランフェス協奏曲 Concierto de Aranjuez 』

  今回は名曲『アランフェス協奏曲』です。
「知られざる名曲を〜」という、ブログタイトルにふさわしくない
ほど有名な作品が続いてしまいますが、まずは、それにこだわらず、
私の好きな作品を主に取り上げて行きたいと思いますので、どうぞ
お付き合い下さい。


20世紀から21世紀初めにかけて、世界で最も聴かれたスペイン
音楽は『アランフェス協奏曲』で、と同時にこの曲の第2楽章
“アダージョ”のメロディは、20世紀以降に創られた音楽の中で
最も魅惑的と評されています。

きっと、この“アダージョ”の美しく哀愁に満ちたメロディは、
誰もが一度は耳にしたことがあるはずです。
言う間でもなく、『アランフェス協奏曲』は、ホアキン・ロドリーゴ
(1901ー1999)が、ギターとオーケストラのために書いた作品です
が、オーケストラのパートをピアノに移しかえて演奏される機会の方
が多いのではないでしょうか。


私はピアノソロとともに、ギターとのアンサンブルをメインに
活動していますが、この『アランフェス協奏曲』から受けた恩恵は
計り知れません。ギターとの合わせとなると、まずこの曲を要望
されることが多いからです。
今までに、日本人をはじめ、海外から来日するギタリストも、
数多く共演しているため、ピアニストでありながら、『アラン
フェス協奏曲』が必然と愛奏曲になったのです。


ギタリストにとっての憧れでもある、この『アランフェス協奏曲』。
ただし、この作品の技術的レベルは、かなり高いものであり、又、
ピアノパートも決して易しくはありません。
どんな楽器でも協奏曲の場合は、オーケストラすべてのパートを
ピアノ譜に編曲した楽譜が普及しているものですが、この曲も然り、
作曲者自身の編曲によって、ギターとピアノのための作品となって
います。ギターは大変デリケートな楽器で、ピアノに比べると
その音量が少ないのが大変であり、バランスには気を遣いますが、
オーケストラとの組み合わせとは又、異なった魅力を引き立てること
ができると私は信じています。


この作品が生まれたきっかけは、ホアキン・ロドリーゴ自身の言葉
によると、1938年の夏のある日、ギタリストのレヒーノ・サインス
・デ・ラ・マーサから「ギター協奏曲を書いてはどうか」と話をもち
かけてきたところから始まります。それから1年後、彼のアドバイスを
受けながら、まず2楽章から取りかかり、その後、3楽章、1楽章の
順に完成させたのです。
その完成に遡ること6年前、ロドリーゴは、ピアニストのビクトリアと
結婚し、新婚旅行で訪れたアランフェスで、彼女は克明にこの地の
美しい情景を、盲目のロドリーゴに分かるよう説明したそうです。
その時に浮かび上がった”アダージョ”のメロディが、このギター
協奏曲に使われたのです。

Aranjuez01.jpg

全編を通して、ゴヤの描いた18世紀の宮廷の様子と当時のマホ
(伊達男)とマハ(伊達女)たちの世界を描いていますが、1楽章は
美しいアランフェス庭園の様子を基盤とし、自然の姿を音にしています。
3楽章は当時の人々への讃歌として、フィナーレの部分に彼らの喜び
溢れる情景が描かれました。そして、この曲のハイライトである
第2楽章は、ロマンスをこめられたメロディの美しさにより、
私たちの心を打ちます。

“アダージョ”の後半のピアノで奏でるクライマックスは、弾いている
私自身も、いつも感動してしまいます。そのあと終曲へと向う、天使
のようなやさしいメロディの部分も私は大好きで、幸福に浸れる瞬間
です。

Aranjuez04.jpg

私はこの曲のイメージを求めて、何度かアランフェスを訪れました。
マドリッドから、列車で1時間弱。赤土が続く、カスティーリャ地方
の荒涼とした景色が、突然、タホ川の恵みを受けての緑豊かな
光景となります。この豊かな環境を気に入り、フェリーペ2世が、
16世紀半ば、ここを王家の保養地として離宮を計画し建築し始
めたのです。増改築を重ねて、18世紀後半、カルロス3世の時代に
完成した王宮も、今では観光スポットとなっています。


そんな歴史ある「アランフェス」をテーマにして、多くの画家や作曲家が、
作品を数多く残していますが、その中でも、ロドリーゴの『アランフェス
協奏曲』がこの町の名を一躍世界へ知らしめた功績は計り知れません。
それを証拠に、この町には「ホアキン・ロドリーゴ通り」という名の道から、
ロドリーゴの銅像はもちろんのこと、その銅像の手前の地面には『アラン
フェス協奏曲』からの”アダージョ”のテーマの音符が路上に刻まれ、永遠に
その栄誉を讃えています。

Aranjuez03.jpg

この町は今でも、ロドリーゴが感じ取ったイメージそのものの佇まいです。
壮麗な王宮に隣接する、美しいフランス式庭園は、散歩に最適な場所。
季節の良い時には、鳥のさえずりと共に、陽光の中、咲き乱れる花々や
噴水をゆったりと楽しむことができます。
是非、スペインへ行くときには、この『アランフェス協奏曲』に思いを馳せて、
この地を訪れてください。その美しいメロディによって彩られた町が、親しく
迎えてくれるとこでしょう。


            

            追記:楽譜・CD情報は、次のタイトルをご覧下さい。
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